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『受胎告知』ロセッティを解説!一人の少女として描かれた等身大のマリア

久しぶりの名画解説です。

個人的に好きなラファエル前派の画家ロセッティの「受胎告知」を色んな角度から眺めてみました!マリアを聖人ではなく普通の少女として描いている所と、不安で窮屈そうな感じが好きなんです。

Twitterに投稿したらいいねも多かったので書いてみようと思いました。(西洋名画アカウントを運営しています♪)

絵画情報

🔹作者:ダンテ・ガブリエル・ロセッティ / Dante Gabriel Rossetti
🔹制作:1850年
🔹技法:油絵
🔹サイズ:高さ: 73 cm、幅: 41.9 cm
🔹所蔵:テート・ブリテン(ロンドン)

受胎告知とは?

新約聖書に書かれているエピソードの1つ。
マリアの前に天使ガブリエルが現れ、マリアが聖霊によってキリストを妊娠したことを告げ、またマリアがそれを驚きながら受け入れるシーンです。

聖書を見てみよう

「ルカの福音書」では、天使がマリアにお告げをするシーンがこのように書かれています。

六か月目に、御使ガブリエルが、神からつかわされて、ナザレというガリラヤの町の一処女のもとにきた。 この処女はダビデ家の出であるヨセフという人のいいなづけになっていて、名をマリヤといった。 御使がマリヤのところにきて言った、「恵まれた女よ、おめでとう、主があなたと共におられます」。

ルカによる福音書 1:26-28 口語訳

受胎告知の伝統的な構図とは

西洋絵画の中でも特に宗教画は「定番の構図」「定番の描き方」が存在します。受胎告知はキリスト教絵画の中でおそらく一番多く描かれた主題で、伝統的な構図は「天使は左、マリアは右」などと決まっていました。受胎告知の伝統的な描き方ルールには以下があります。

伝統的な受胎告知あるある

  • お告げを受ける場所は室内の設定で描かれることがほとんど
  • 天使ガブリエルとマリアは正面から見て左右に配置される
  • 天使ガブリエルは左、マリアは右にいるもの
  • 天使ガブリエルの羽の描写は画家の腕の見せ所
  • 天使ガブリエルのポーズはひざまずいている事が多い
  • マリアは「敬虔なポーズ」や「驚きのポーズ」が多い
  • マリアのアトリビュート(持物)として、白百合の花、読みかけの聖書、水差しなどが描かれることが多い
  • 聖霊を象徴する鳩、空からの光線、神の手が描かれることもある

下の絵画は中世美術の時代(1333年)に描かれた受胎告知で、とても伝統的な描き方をしていますね。上に箇条書きで書いたルールが全て当てはまっていることが分かります。

シモーネ・マルティーニ『聖女マルガリータと聖アンサヌスのいる受胎告知』 1333年
シモーネ・マルティーニ『聖女マルガリータと聖アンサヌスのいる受胎告知』 1333年

以上の基礎知識を踏まえ、ロセッティの「受胎告知」を鑑賞しましょう!

ロセッティ「受胎告知」1850年

私が気になる点

ここに書いているのはあくまで私自身の個人的な見解および空想です。内容の正確さを保障するものではありません。

伝統を無視した構図

一言でいうと、伝統的な描き方から脱している斬新な構図です。また、一人の少女としてのマリアの不安な感情や、思い詰めた様子が現代的に表現されています。

部屋の片隅

伝統的な受胎告知が部屋全体を描いているのに対し、この受胎告知は部屋の隅だけをクローズアップしています。

そのため、この部屋の広さや内装は見ることができません。部屋の一部だけを切り取った構図が、追い詰められたようなマリアの表情と相まって窮屈さを感じさせます。

受胎告知 部屋の描き方

ガブリエルが手前、マリアが奥

伝統的な受胎告知では、二人は鑑賞者からみて左右に配置され、ほぼ向き合った姿で描かれます。レオナルド・ダ・ヴィンチの「受胎告知」は特に左右対称性が強い作品です。

フラ・アンジェリコの「受胎告知」でも天使がやや手前でマリアがやや奥という配置は見られますが、ロセッティのように大胆に奥行きを出したものは珍しいです。

ロセッティのものは、天使が手前で立ってこちらに背中を見せており(背中を見せているのも珍しい)表情はあまり分かりません。その奥のベッド(マットレスタイプのシングルベッド?)にマリアが横になり、身体を壁のほうに寄せています。この位置関係も、マリアが追い詰められているように見える理由の一つだと思います。

受胎告知 天使とマリアの配置の比較

アトリビュートがほぼない

伝統的な受胎告知には、【白百合、聖書、水差し、鳩、光線、神の手】など、アトリビュートやシンボル満載の作品が見られます。少なくとも百合の花と聖書の二つくらいは描かれいてるの一般的です。

フィリッポ・リッピの「受胎告知」と比較してみましょう。

受胎告知のアトリビュート
フィリッポ・リッピの「受胎告知」

比較すると一目瞭然。ロセッティの受胎告知に出てくるアトリビュートは、天使が手に持っている白百合の花と赤いタペストリーに描かれた白百合のみ。とてもシンプルですね。

マリアの表情

皆さんはロセッティのマリアからどんな心情を感じますか?人によって色んな受け取り方ができる表情だと思います。

私は、急な知らせに対しての恐れ(いきなり妊娠するなんて!)、自分はどうなるんだろうという不安、この運命を受け入れるしかないと決意を固めようとしている心情を感じます。

マリアを聖なる存在ではなく等身大の少女として描き、差し出された百合の花をじっと見つめて考えこむ表情は記憶に残りますね!

三原色が使われている

色に注目してみれば、色の三原色である【赤・青・黄色】が使われていることに気が付きます。ほぼ白色、クリーム白、茶色で構成された絵の中で3つの色がアクセントになっています。

視線の動きが設計されている

これは私が感じたことですが、目線の動きが用意されているように思います。

この絵を見ると、まず青いカーテンと白い壁の真ん中にいるマリアの顔と光輪に目が行きます。次に、一つしかない窓に重なる天使の頭を見て、そこから右下に視線が動きます。特に白百合とマリアの服のシワはほぼ一直線になるように描かれていて、右下の赤いタペストリーにぶつかります。そこからマリアの服のシワとベットの角を通って天使の足元へと目線が移動します。

ロセッティがそのような意図を持って描いたかは分かりませんが、私はどんな風に感じました!

いかがですか?

気になる名画、ロセッティの「受胎告知」を私なりに鑑賞しました。

この絵は見る人によって印象が大きく違うと思います。天使ガブリエルの手元をよく見ると、左手は手の平を下に向けていて、怯えるマリアを「怖がらなくて大丈夫」と落ち着かせようとしているかのようです。

10代の普通の少女の前にいきなり天使が降りてきて「あなたは身籠る」って言われたらそりゃパニックになるよね…。と、普通の感覚で受胎告知のお話を眺める視点を気付かせてくれます。

Twitter(@koni_art)でも名画解説を発信しています♪

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