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絵画情報
題名:受胎告知のマリア (英:The Virgin Annunciate)
画家:アントネロ・ダ・メッシーナ(英:Antonello da Messina)
制作:1475年頃
収蔵:シチリア州立美術館 パレルモ イタリア
様式:ルネッサンス ヴェネチア派
まずは簡単に解説
聖母マリアが一般女性の肖像画のように見える、メッシーナの「受胎告知」です。
受胎告知の絵としては珍しい、マリア一人を描いた特徴ある作品です。背景や装飾を一切省き、懐妊を告知されて思案するマリアの深い精神性、厳かさ、時が止まったような静寂さを感じます。右手に見られる短縮法(遠近法の一つ)にも注目です!
それではこれからじっくり見ていきましょう。
受胎告知とは?
新約聖書に書かれているエピソードの1つ。
処女マリアの前に天使ガブリエルが降り立ち、マリアが聖霊によってキリストを妊娠したことを告げ、またマリアがそれを驚きながら受け入れるシーンです。
受胎告知は定番テーマ
教会がパトロン(注文主)だった中世〜ルネサンスにおいて受胎告知は定番のテーマでした。受胎告知を描いた名画は山ほどあります。
マリア一人だけの受胎告知は珍しい
受胎告知のよくある構図は、フラ・アンジェリコの『受胎告知』に見られるように天使ガブリエルとマリアの二人が登場するものです。
伝統的な『受胎告知』といえば、マリアとガブリエルの2人を左右に配した構図が定番でした。
メッシーナの『受胎告知』ではマリア一人だけが描かれ、しかも顔を正面から描いています。
視線の先には告知を告げた天使ガブリエルがいると思われるので、この絵はガブリエルの視点から描かれたという事も言えそうです。
このようにマリアだけが正面から描かれた受胎告知はほとんどなく、斬新な構図だと思います。
装飾を省いてマリアにフォーカス
背景は黒く、テーブルと聖書以外の装飾はありません。
マリアのアトリビュート(属性)である白百合や白い鳩などを描いた一般的な受胎告知と比べると、この絵は天使のお告げを聴いて静かに思案するマリアの姿に視線が吸い込まれます。
右手の描写に技あり!短縮法
マリアの右手(向かって左手)は前に向かって伸ばされています。
この描き方は”短縮法”と呼ばれる遠近法の一種。視覚的原理に基づいて対象を圧縮・短縮して描く高度な技法で当時最先端のテクニックでした。
短縮法といえ『死せるキリスト』
ちょっと話しが逸れますが、短縮法を存分に味わえる同時代の作品といえば、マンティーニャの『死せるキリスト』があります!
マンティーニャはルネッサンス・パドヴァ派の画家。メッシーナの『受胎告知』の22年後、1497年に描かれたのが『死せるキリスト』です。
十字架から下ろされたキリストの亡骸と、亡骸のそばで悲しむ聖母マリアと女性の姿が描かれています。
足元からキリストを見上げた時の目線で、足→頭へと短縮して描かれているのが分かりますね。
画家について
- 15世紀ルネサンス期に活動したイタリアの画家
- イタリア絵画の中でもヴェネツィア派初期の重要な画家
- 肖像画や宗教主題を取り扱った絵画を得意とした
- フランドル風の細密描写をイタリア絵画に導入した
- イタリアにおいて油彩の技法を最初に用いた画家の一人
画家の通称「アントネロ・ダ・メッシーナ」は「メッシーナ村のアントネロ」という意味なので、省略して「メッシーナ」と呼ぶと村の名前になってしまいます。正確には「アントネロ」が正解です。
ちなみに「レオナルド・ダ・ヴィンチ」は「ヴィンチ村のレオナルド」ですからこちらも「ダ・ヴィンチ」というのは誤りで、「レオナルド」が正しいです。
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