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【キリスト教絵画】イエス・キリストの死因について考えた

キリストの死因は窒息死

西洋絵画と切っても切り離せないキリスト教美術。西洋美術を知るうちに、キリスト教や聖書にも詳しくなりました。

キリスト教絵画でよく描かれる定番テーマに「キリストの磔刑」があります。キリストが十字架に磔(はりつけ)にされ息を引き取る場面を描いたもので、数多くの画家が作品を残しています。

キリストの死因は失血死?

この絵画はフラ・アンジェリコの「キリストの磔刑」1420年。

手や脇腹から血がドバドバ出ているこの絵を見ていて、疑問が浮かびました。

(結局、キリストの死因はなんだったの?)

ここでいう死因とは「神に召された」のような宗教的な意味ではなく、「失血死」など医学的な原因のことです。

生身の成人男性が、垂直の板切れに数本の釘だけでぶら下がって死亡した場合の直接的・間接的な原因は何になるのか、ということです。

十字架にはりつけにされるということは、こんな風になるということ⬇︎

しかし「はりつけ」は罰の内容で、直接の死因にはなり得ません。八つ裂きの刑なら失血死、火炙りの刑なら火傷…のように、罰とは別に死因があるはず。

それでは、人間が磔にされて亡くなった場合の死因とは…?

新約聖書をおさらい

まずは新約聖書の該当部分をおさらいすることにしました。

『マタイによる福音書』では、キリストが十字架に磔にされてから息を引き取るまで、以下のように描写されています。

彼らはイエスを十字架につけてから、くじを引いて、その着物を分け、 そこにすわってイエスの番をしていた。そしてその頭の上の方に、「これはユダヤ人の王イエス」と書いた罪状書きをかかげた。

マタイによる福音書

さて、昼の十二時から地上の全面が暗くなって、三時に及んだ。そして三時ごろに、イエスは大声で叫んで、「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」と言われた。それは「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。

するとすぐ、彼らのうちのひとりが走り寄って、海綿を取り、それに酢いぶどう酒を含ませて葦の棒につけ、イエスに飲ませようとした。ほかの人々は言った、「待て、エリヤが彼を救いに来るかどうか、見ていよう」。イエスはもう一度大声で叫んで、ついに息をひきとられた。

マタイによる福音書

聖書から分かったこと

  • キリストは遅くとも昼の十二時までに磔にされていた
  • 少なくとも十二時〜三時までは磔にされたまま生存していた
  • 大声で叫んだ後に亡くなった

シンプルな聖書の情報だけではほぼ何も分かりませんでした。「大声で叫んだ直後に亡くなった」とすると失血死も窒息死も当てはまらないのでは・・・?

窒息死説が濃厚

調べてみたところ幾つかの意見が見つかりました。結論からいうと、窒息死説を支持している方が多かったです。

磔刑に処されたキリストは日照りによる脱水で亡くなる前に、呼吸困難で短時間に絶命したものと検案されたのです。

『イエスの右胸、マリアの左胸』

キリストの十字架刑は手足をぶっとい釘で十字架に貼り付けます。すると、呼吸が困難になるようです。しかし、一気には死ねません。体が反応して呼吸しようとしますから。そして死因は窒息死らしいと聞いています。

イエス・キリストの死因はなんですか? – Quora

イエス・キリストの死因は、肺圧迫による、窒息死です。

Yahoo知恵袋

イエス・キリストの死因は、解剖学・医学的な見地から見た場合【窒息死】の可能性が高いようです。

外科や解剖学のお医者さんに直接意見を聞いてみたい…!

窒息死だとすると、磔にされてから少なくとも3時間生存していた点や、大声を上げてから亡くなった点と矛盾してしまいますが、それはそれ!ということにしましょう。

釘の数は3本と4本がある

補足ですが、西洋絵画で「キリストの磔刑」を主題にした絵画は、釘の数が3本と4本のパターンがあります。片足に一本ずつ打って4本か、両足をまとめて一本で3本か…ということですね。

3本釘で磔にされたキリスト

エル・グレコの「キリストの磔刑」。キリストの身体は部分的に引き伸ばされ、マニエリスムの特徴が顕著です。

4本釘で磔にされたキリスト

4本釘の例。ベラスケスのイケメンすぎる「キリストの磔刑」1632年です。キリストの足元には木の板が当てがわれ、もはや木の板の上に立っています。

ベラスケスのイケメンすぎる「キリストの磔刑」1632年

主流の表現は3本パターンですが、私の好きなベラスケスの作品は4本釘で描かれています。

「キリストの磔刑」を鑑賞する際には、釘の数、傷跡、出血の仕方にも注目してみてください!

Twitter(@koni_art)でも名画解説を発信しています♪

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