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【日本語教師さん必見】ローマ字表記の基本とよくあるミス&正しい書き方

こんにちは!オンライン日本語講師のコニです。

わたしはオンライン日本語レッスンの際に、チャットで新出単語やフレーズを送っています。「ひらがなが読めない」「一応読めるけど時間がかかる」という生徒さんの場合には、「漢字+ひらがな+ローマ字」や、「英語:ひらがな+ローマ字」などで送ることが多いです。

その際、( 「つ」は「tsu」と「tu」どっちがいいんだっけ? )などローマ字表記に迷うことがあり、自分のメモががてらブログにまとめました!

どんな時にローマ字読みを使う?

単語や文章にローマ字読みを併記するかどうかは、生徒さんの学習レベルによって判断しています。たとえば以下のような場合にローマ字を付けてあげると学習者の理解がスムーズになります。

以上を踏まえて、次章以降では「いつ、どのような場合に」ではなく、ローマ字を付ける前提として、外国人学習者が誤解しやすい発音や表記ルールを中心に紹介していきます。必要に応じてご自由にローマ字を併記しつつ、学習者の負担を減らす工夫を進めていきましょう。

生徒さんがひらがなをまだ読めないとき

入門期の学習者はひらがなを習得する前に日本語の音そのものを理解したい場合があります。ローマ字で単語の読み方を示すことで、発音と文字の対応を先に把握できるようになります。

読み方はわかっていても、アクセントや音の区切りを意識させたいとき

たとえば「がっこう(gakkō)」のように、促音(っ)や長音(ー)をしっかり意識してほしい場合、ローマ字を見せると拍(モーラ)数の感覚がつかみやすくなります。ハイフンを入れて「ga-kko-u」のようにより明確に伝えることもできます。

固有名詞や会社名・地名など、読み方が難しいとき

たとえば「渋谷(Shibuya)」「東大(Tōdai)」「成田空港(Narita Kūkō)」など、漢字の読み方を一度に覚えるのが難しい場合はローマ字を併記すると混乱を防げます。

ヘボン式?訓令式?

ローマ字には「ヘボン式」と「訓令式」の2つの表記方法があります。今後、日本では「ヘボン式を基本とする」方向性が示されているため、「ヘボン式」で表記するのがおすすめです。

参考記事:https://www.jiji.com/jc/article?k=2025031101090&g=soc

破裂音・摩擦音「ち」「つ」「し」「じ」の表記

特に以下の4つは、外国人学習者がつまずきやすいので丁寧に説明しましょう。

「ち/チ」→ 「chi」(✕ti)

「ち」は舌先を歯の裏にあてる摩擦音です。英語の “cheese” の “che” に近いので、chi と書くと学習者に正確に伝わります。「 ti 」と書いてしまうと「ティ」と発音されてしまう可能性があります。

  • ちず → chizu
    ✕ tizu →「ティズ」「ティーズ」と読んでしまう
  • いちばん → ichiban
    ✕ itiban →「イティバン」と読んでしまう
  • ちょこれーと → chokorēto
    ✕ tokorēto→「トコレート」と読んでしまう

「つ/ツ」→「tsu」(✕tu)

「つ」は「t」と「s」が連続した破擦音です。必ず「tsu」と表記し、「tu」は避けましょう。英語話者は「 tu 」を「トゥ」と読む傾向が強いです。(例:tuition トゥイション:学費)

  • つき → tsuki
    ✕ tuki →「トゥキ」と読んでしまう
  • おつかれさま → otsukaresama
    ✕ otukarsama → 「オトゥカルサマ」や「オタカルサマ」と読んでしまう

「し/シ行」→ shi(✕si)

「し」の音は英語の “she” に近い摩擦音です。si ではなく shi と書くと、誤読を防げます。

  • しろ(白) → shiro
    ✕ siro →「スィロ」と読んでしまう
  • しごと(仕事) → shigoto
    ✕ sigoto →「スィゴト」と読んでしまう
  • しゃしん(写真) → shashin
    ✕ sasin →「サシン」や「スァシン」と読んでしまう

「じ/ジ行」→ ji(✕ zi/jy/jyi)

「じ」は英語の “jeep” の “j” に近い音です。ji と書き、「zi」「jy」「jyi」は避けましょう。

  • じしん(自信/地震) → jishin
    ✕ zisin →「ズィスィン」と読んでしまう
  • じょし(女子/助詞)→ joshi
    ✕ jyoshi →「ジャヨシ」と読んでしまう
  • じゅうぶん(十分) → jūbun
    ✕ zyūbun / jyūbun →「ズューブン」と読んでしまう

拗音「きゃ」「きゅ」「きょ」 などの表記

拗音は「子音+小さい『ゃ・ゅ・ょ』+母音」の組み合わせです。ヘボン式では以下のように表記します。

「きゃ」→ kya 「きゅ」→ kyu 「きょ」→ kyo

「k」+「y」+「a/u/o」という組み合わせです。kionen とは書かず、必ず kyonen と表記しましょう。

  • きょう (今日) → kyō または kyou(拗音+長音)(✕ kiou)
  • きゃく (客) → kyaku(✕ kiaku)
  • きゅうり → kyūri または kyuuri(✕ kiuri)
  • きょねん (去年) → kyonen(✕ kionen)

「しゃ」→ sha 「しゅ」→ shu 「しょ」→ sho

「s」+「h」+「a/u/o」の組み合わせです。sya ではなく shasyu ではなく shusyo ではなく sho を使いましょう。

  • しゃしん (写真) → shashin(✕ sasin)
  • しゅくだい (宿題) → shukudai(✕ syukudai)
  • しょうがくせい → shōgakusei または shougakusei(✕ syo-gakusei)

「ちゃ」→ cha 「ちゅ」→ chu 「ちょ」→ cho

「chi」から派生する拗音なので、cha/chu/cho を使います。tya/tyu/tyo は誤りです。

  • ちゃわん (茶碗) → chawan(✕ tyawan)
  • ちゅうがく (中学) → chūgaku または chuugaku
  • ちょこれーと → chokorēto(✕ tyokoreeto)

「にゃ」→ nya 「にゅ」→ nyu 「にょ」→ nyo

「n」+「y」+「a/u/o」で音節をそろえます。その他「ぎゃ/ギャ → gya」「ぎゅ/ギュ → gyu」「ぎょ/ギョ → gyo」「びゃ/ビャ → bya」「びゅ/ビュ → byu」「びょ/ビョ → byo」「ぴゃ/ピャ → pya」「ぴゅ/ピュ → pyu」「ぴょ/ピョ → pyo」なども同じルールで表記します。

  • にゃんこ (猫) → nyanko
  • にゅうがく (入学) → nyūgaku または nyuugaku
  • にょろにょろ → nyoron-yoron

「ふ/フ」の表記

日本語の「ふ/フ」は、唇をすぼめて息を摩擦させる「両唇摩擦音(IPAでは [ɸ])」で発音される音です。そのため、厳密に表記すると「ɸu」となりますが、外国人学習者向けにはわかりやすさを優先して「fu」と書くのが一般的です。「hu」と表記するのは誤りです。

  • ふじさん (富士山) → Fujisan(✕ Hujisan)
  • ふね (船) → fune(✕ hune)
  • ふゆ (冬) → fuyu(✕ huyu)

撥音「ん/ン」の表記

「ん」単独の表記

日本語の撥音「ん」は基本的に n と表記します。

  • ほん (本) → hon(✕ honn)
  • さん (三) → san(✕ sann)
  • けん (剣) → ken(✕ kenn)

「ん+母音・ん+y」の場合はアポストロフィ( ‘ )で区切る

撥音「ん」のあとに 母音(a, i, u, e, o) または y(きゃ・きゅ・きょなど) が続く場合、「n’母音」 の形でアポストロフィ(’)を入れると混乱を防げます。

信号(しんごう)→ shingō または shingou

正しい表記:shingō または shingou

「shin + gō」と分かるので、アポストロフィは不要です。

銀行(ぎんこう)→ ginkō または ginkou

正しい表記:ginkō または ginkou

「gin + kō」とわかりやすいため、アポストロフィ不要です。

信用(しんよう)→ shin’yō

正しい表記:shin’yō

✕ NG例:shinyō

shi + nyō 「しにょ」と誤読されやすいです。

簡単(かんい)→ kan’i

正しい表記:kan’i

✕ NG例:kani

ka + ni →「かに」と誤読されやすいです。

ポイント

  • 「ん+母音」の場合 → アポストロフィを入れる(例:kan’i「簡易」)
  • 「ん+y」の場合 → アポストロフィを入れる(例:shin’yō「信用」)
  • 「ん+子音」の場合 → アポストロフィは不要(例:ganbaru「頑張る」)

促音「っ/ッ」の二重子音の表記

小さい「っ」は次の子音を二重に書く

  • がっこう (学校) → gakkō または gakkou
  • きって (切手) → kitte
  • まって (待って) → matte
  • 「抹茶(まっちゃ)など「っ+ch」の場合は、「c」を二重にせず、matcha(✕ mattcha)と書きます。
  • 「一生(いっしょう)」など「っ+sh」の場合、同様に、isshō(✕ issyo, isssho)と書きます。
  • 呼び名「まっちゃん」なら慣用的に Macchan と書く場合がありますが、教材用には原則 Matchan とするほうが混乱が少ないです。

長音(伸ばし棒「ー」や母音連続)の表記

長音の表記には「マクロン(ō, ū)方式」と「母音重ね(oo, uu, ou 等)方式」の2つの方法があります。どちらを使うか決めて混ざらないようにしましょう。

マクロン方式(公式ヘボン式)

母音の上に マクロン(¯) をつけて長音を示します。

メリット:文字数が少なく、視覚的に長音であることが一目瞭然です
デメリット:マクロン方式で入力するのに一手間かかる(例えば「ō」は「o」を長押ししてから選択する必要がある)

  • 大きい(おおきい) → ōkii(✕ okii)
  • 東京(とうきょう) → Tōkyō(✕ Tokyo)
  • 学校(がっこう) → gakkō(✕ gakkoo)
  • 十(じゅう) → (✕ ju)

母音重ね方式

「ou/uu/ee」などの母音連続で長音を示します

メリット:日本語入力なしでキーボードだけで簡単に打てるので時短になります
デメリット:表記が少し長くなります

  • おおきい → ookii
  • とうきょう → Toukyou または Toukyo
  • がっこう → gakkou
  • じゅう → juu
  • メリット:日本語入力なしでキーボードだけで簡単に打てる。

ハイフン方式(非推奨)

簡単で感覚的なのでつい使ってしまいますが、あまり使用しない方が良いとされています。

  • おおきい → o-kii
  • とうきょう → To-kyo-
  • がっこう → gakko-
  • じゅう → ju-

ポイント

  • 初めは「母音重ね方式」を使い、慣れてからマクロン方式を教えるとスムーズです。
  • 生徒さんに「どちらの表記に慣れているか」聞いてみるのもおすすめです。
  • 辞書や論文などではマクロン方式が主流なので、高度な学習段階でマクロンを導入するとよいでしょう。

助詞「は」「へ」「を」の表記

日本語の助詞は、ひらがなで書く文字と実際の“発音”が異なる場合があります。ローマ字表記では必ず発音どおりに書いて、生とさんを混乱させないように注意しましょう。

「は」→ wa

「は」は、「葉っぱ」など単語内での発音は「ha」 ですが、助詞として使うときは「wa」に変わります。

  • こんにちは → konnichiwa(✕ konnichiha)「wa」にする
  • おはようございます → ohayō gozaimasu 「ha」でOK

「へ」→ e

「へ」は、、「屁理屈」など単語内での発音は文字としては「he」ですが、助詞の場合は発音どおり「e」と書きます。

  • 学校へ行く → gakkō e iku(✕ gakkō he iku)
  • 日本へようこそ → Nihon e yōkoso(✕ Nihon he yōkoso)

「を」→ o

厳密なヘボン式では wo ですが、発音が /o/ なので、現在では学習者向けに「o」とするのが一般的です。

  • ごはんを食べる → gohan o taberu(✕ gohan wo taberu)
  • 映画を見た → eiga o mita(✕ eiga wo mita)

その他の助詞

  • de(例:バスで行く → basu de iku
  • to(例:友だちと会う → tomodachi to au
  • ka(例:何とか → nan toka

二重母音・連母音の表記

日本語には母音が続く部分が多くあり、英語圏の学習者には「えい」「おう」「あい」などをひとつのまとまりとして覚えにくいことがあります。ローマ字では以下のように区別します。

「あい/ai」

  • あい (愛) → ai
  • かい/会 → kai
  • せい/声 → sei
  • 解説
    「e+i」などでも「ei」と書きます。学習段階では「ai」とまとめて教えるとわかりやすいです。

「えい/ei」または ē

  • えいが (映画) → eiga または ēga
  • せいかつ (生活) → seikatsu または sēkatsu
  • せんせい (先生) → sensei または sensē
  • 解説
    実際の発音はやや長めの /ē/ ですが、「ei」と表記し、「e の後に i が続く二重母音」と説明すると習得しやすいでしょう。

「おう/ou」または ō

  • おうさま (王様) → ōsama または ousama
  • とうきょう (東京) → Tōkyō または Tōkyou または Toukyou
  • おとうと (弟) → otōto または otouto
  • 解説
    長音と母音連続の区別は教材で統一ルールを決めておくと混乱を防げます。

「あお/ao」「おい/oi」などはそのまま書く

  • あお (青) → ao
  • おい (甥) → oi
  • こい (恋) → koi
  • 解説
    母音が続く音をそのまま表記します。特に長音ではないことを明示できるようにします。

同音異義語は?

同じ発音でも漢字や意味が異なる語は、ローマ字表記だけでは区別できないため、必要に応じてカッコ書きやカタカナ併記で補足します。また、発音の違いも注意して教えましょう。

例1:はし(箸・端・橋)

ローマ字だけではわからないので、「hashi (箸)」「hashi (橋)」のように後ろに補足をつけます。また、発音の違いを練習したり、簡単な例文を作ってみます。

  • hashi(箸)/ hashi(端)/ hashi(橋)
  • 例文「お箸を使う/ 服の端を持つ/ 橋を渡る」で学ぶ

例2:かえる(帰る・蛙)

上と同様、ローマ字だけでは違いが分からないので、漢字と英語の両方で補足します

  • kaeru(帰る – back to)
  • kaeru(蛙 – frog)

おまけ:アクセント(拍の区切り)を意識させる書き方

日本語は「拍(モーラ)」でリズムを刻みます。ローマ字だけでは拍を完全には示せませんが、以下のように「 – 」で区切るとリズム感をイメージしやすくなります。

  • 例:obāsan → モーラを説明する時はこう書く→「『o-ba-a-sa-n』で 5 拍
  • 例:otsukaresama → モーラを説明する時はこう書く→ 「『o-tsu-ka-re-sa-ma』で 6 拍

「ん(n)」が入るときは、「ん」を独立させて1拍であることを強調する

  • 例:nihon → 「ni-ho-n」(3 拍)
  • 例:shinjuku → 「shi-n-ju-ku」(4 拍)

濁音や半濁音が入るときは、区切りを意識する

  • 例:kyōshitsu → 「kyo-u-shi-tsu」(4 拍)
  • 例:arigatō gozaimasu → 「a-ri-ga-to-u-go-za-i-ma-su」(10 拍)

教材内で声に出して一緒にリズムを取ると、学習者の「モーラ感覚」が身につきやすくなります。

ありがちな誤表記と正しい表記の一覧

以下に、間違えやすい表記と正しい表記をまとめた表を掲載します。

❌誤表記⭕️正しい表記🙆‍♀️例
tizuchizu地図(ちず)→ chizu
itiichi一(いち)→ ichi
tukitsuki月(つき)→ tsuki
sigotoshigoto仕事(しごと)→ shigoto
sasinshashin写真(しゃしん)→ shashin
zisinjishin地震/自信(じしん)→ jishin
hujiFuji富士(ふじ)→ Fuji
tyawanchawan茶碗(ちゃわん)→ chawan
tyokoreetochokorētoチョコレート(ちょこれーと)→ chokorēto
jyaja邪魔(じゃま)→ jama
jyuju受験(じゅけん)→ juken
mattchimatchi抹茶(まっちゃ)→ matchi
shinyoushin’yō信用(しんよう)→ shin’yō
kanikan’i簡易(かんい)→ kan’i
konnichihakonnichiwaこんにちは(助詞「は」→ wa)→ konnichiwa
gohan wo taberugohan o taberuごはんを食べる(助詞「を」→ o)→ gohan o taberu

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ローマ字表記の誤りやすい例と正しい表記(意味・例語つき)

まとめ

ローマ字表記をした方がいい時

ひらがなをまだ読めない段階、漢字が多すぎる場合、固有名詞や難読語など、学習者が文字情報を追うのに負担がかかるときにローマ字を併記すると効果的です。

ヘボン式を基本にする

破擦音・摩擦音(chi/tsu/shi/ji など)は英語の近似音を使い、拗音(kya/sha/cha/nya など)や「ふ(fu)」は正しく示しましょう。

長音(ー)、促音(っ)、撥音(ん)の区切りを明示する

マクロン方式や母音重ね方式、アポストロフィの使い分けで学習者に「拍(モーラ)」や音節の区切りを意識させることが大事です。

助詞は発音どおりに書く

「は→wa」「へ→e」「を→o」のように、見た目の文字と発音が異なるものは必ず発音どおりに書きましょう。

長文になりましたが、日本語教師が知っておきたいローマ字表記についてまとめました。私自身、生徒さんに発音やモーラが分かりやすく伝わるようなローマ字表記を心がけていきたいです!