こんにちは!ノマド日本語教師のコニ(@koni_bali)です。
日本語を教えていると、学習者の発音のつまずきから「自分の話し方」にも気づかされることがありますよね。
今回は、「必要(ひつよう)」の発音をめぐって、母音の無声化と、自分の発音のクセについて勉強になった出来事をメモしておきます。
私のような駆け出し日本語教師の方にも、何かヒントになればうれしいです。
目次
「ひつよう」が「しつよう」「いつよう」に?
先日、アメリカ人の初級学習者さんに「必要(ひつよう)」を教えていたときのこと。
何度言っても、「しつよう」や「いつよう」になってしまうのです。
レッスン中は「馴染みがない発音だったのかな?」と思ったのですが、後になってよく考えてみたら、私自身の「ひ」の発音も、母音の部分がほとんど聞こえてなかったのでは?と気づきました。
あ、これが「母音の無声化」ってやつか!!!
と思ったのです。
「母音の無声化」って?
日本語では、「い」や「う」が無声子音(声を出さない音)に挟まれると、声を出さずに発音されてしまうことがあります。これを母音の無声化と言います。
つまり、「言ってるけど聞こえない」音。
たとえば、次のような単語では「い」や「う」がほとんど聞こえなくなることがあります。
✅ 無声化しやすい単語(音声記号つき)
単語 | 発音記号(IPA) | 無声化する母音 | 聞こえ方の例 |
---|---|---|---|
ひこうき | [çi̥koːki] | [i](ひ) | 「しこうき」に近く聞こえる |
しつもん | [ɕi̥tsɯmoɴ] | [i](し) | 「すつもん」に近く聞こえる |
すきです | [sɯ̥kidesɯ] | [ɯ](す) | 「スッキです」に聞こえる |
ちかてつ | [tɕi̥katetsɯ] | [i](ち) | 「つかてつ」に近く聞こえる |
きって | [ki̥tte] | [i](き) | 「くって」のように聞こえる |
これ、ネイティブには自然に聞こえるのですが、学習者にとっては「聞こえない=存在しない音」に感じられることあります。
「ひ([çi])」は英語にはない音?

「ひ」はIPAで書くと [çi]。これは「無声硬口蓋摩擦音」といって、日本語に特有の発音です。
英語やインドネシア語、中国語などにはこの音がありません。そのため、英語ネイティブの学習者さんはこの音を [h](hi, history)や [ʃ](she) のような音で代用しようとすることがあります。
特に問題になるのが、「ひ」のあとの母音「い([i])」が無声化してしまうケースです。
つまり「ひ([çi])」の [i] がほとんど聞こえなくなり、結果として「し」や「い」に近く聞こえてしまうことがあります。
次回に生かせる改善点は?
音の違いが意識できるようになるには、時間と練習が必要です。「あなたの母国語にない音なので、難しくて当然」「違って聞こえるのは当然」という前提で、やさしく段階的に発音を教えていきたいと思いました。具体的にこんなことをやってみたいと思います。
- 「ひ」の子音 [ç] の調音位置(舌の位置・口の形)を意識させる
- 「い」の無声化を避けて、いったん明瞭にハッキリと発音する練習を取り入れる
- 無声化しやすい単語をたくさん使い、実用的な例文を練習しながら慣れていく
- 教える側も、自分の発音を録音するなどして、自分の無声化の癖を知っておく
今回の気づき
この出来事から気づいたことは2つ✌️
- 私自身の発音にも無意識の無声化があること
- 学習者が聞き取れなかったのは、母語にない音+無声化のダブルパンチだったこと
どちらか一方の問題ではなく、“教える側のクセ”と“学習者側の音韻的困難”の両方が重なっていたと思いました。
まとめ:発音指導は自分の発音にも目を向ける
「伝えてるつもりが、実はちゃんと伝わっていなかった」というのは、発音指導ではよくあることだと思います。
発音は「耳」だけでなく「口」でも教える必要があるからこそ、教師自身の音声感覚のメンテナンスも大切だと改めて思いました。
レッスンの中でふと気づかされる、こういう瞬間が面白いな!と思います。
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