こんにちは!ノマド日本語教師のコニ(@koni_bali)です。
本記事は、日本語教師さん、日本語教育を学んでいる人、日本語が好きな人向けです。
日本人が当たり前のように使い分けている2つの読み方、どちらも正解です。けれど、なぜ2つの読み方があるのか、そしてどんな場面でどちらを使えばよいのか、日本語を教える立場としては正しく理解しておきたいところです。
本記事では、「にほん/にっぽん」の由来や歴史、現代での使い分け、そして外国人学習者にどう教えるべきかまでを、わかりやすく解説します。
目次
「にほん」と「にっぽん」どちらが正しいの?
結論から言えば、どちらも正しいとされています。
2009年、内閣官房広報室は公式に「日本(にほん、にっぽん)の読み方は、いずれも広く定着しており、いずれも正しい」と発表しました。そのため、放送・出版・教育現場などでもどちらの読み方も使用が認められています。
たとえば:
- NHKや学校では「にほん」が一般的
- スポーツの応援やお札などでは「にっぽん」が好まれる
このように、音の印象や場面の雰囲気に合わせて使い分けられているのが現状です。
「日本」読み方の歴史
「日本」という国号の読み方が明確に定着したのは、実は近代以降のことです。以下のような流れで読み方が変遷してきました。
時代 | 読み方・背景 |
---|---|
古代(〜7世紀) | 日本では「倭(わ)」「大和(やまと)」と呼称されていた。 中国では「倭国」→ のちに「日本」は「リーベン(Rìběn)」と発音される。 |
奈良〜平安期 | 日本で「日本」という表記が使われ始め、漢音で「ジッポン」や「ニッポン」などの音で輸入(★この時点ですでに促音化されていた) |
江戸時代 | 「にっぽん」が一般的に使用されるようになる。文献・口語ともに多く確認される。 |
明治時代 | 政府文書・新聞などに「にっぽん」が多く見られる。国家意識の高まりとも関係。 |
大正〜昭和以降 | 「にほん」も広く使われ始める。柔らかく日常的な響きとして定着。 |
現代 | 「にっぽん」「にほん」両方が併存しているが、「にほん」勢が優勢。 |
💡 メモ
- 「にっぽん」は、「中国語由来の漢語(漢音)」として輸入された言葉
- 歴史的には「にっぽん」が先に広まり、「にほん」が後から定着
- 最初から「促音化された形(にっぽん)」で日本語に入ってきたため、 日本で「にちぽん」「にちほん」などの形が使われていた歴史はない。
次に、ここで登場している言葉「促音化」について説明します。
「促音化」とは?
促音化(そくおんか)とは、語中や語と語の連結時に「っ(促音)」が現れる音韻変化のことです。
特に「ち」「つ」「く」「き」などの子音の後に起こりやすく、日本語のリズムや発音のしやすさに大きく関係します。日本語教育能力検定試験でも必須の知識です。
促音化を経た言葉には、以下のような例があります:
漢字 | 元の形 | 促音化後 | 発音記号 |
---|---|---|---|
日本 | にち+ほん | にっぽん(nippon) | [nipːoɴ] |
一本 | いち + ほん | いっぽん(ippon) | [ɪpːoɴ] |
失敬 | しつ + けい | しっけい(shikkei) | [ɕikkeː] |
学校 | がく + こう | がっこう(gakkō) | [ɡakːoː] |
一点 | いく + てん | いってん(itten) | [itːeɴ] |
日光 | にち + こう | にっこう(nikkō) | [nikːoː] |
「にち + ほん」→「にちほん」→「にっぽん」
このように「にっぽん」という読みは、「促音化(にち→にっ)」して生まれたというのが通説です。
「にほん」「にっぽん」の使い分け
現代では「にほん」と「にっぽん」が以下のように使い分けられる傾向があります。
「にっぽん」が使われる場面:公式
- お札:「NIPPON GINKO(日本銀行)」
- スポーツ:「がんばれ!にっぽん!」「にっぽんチャチャチャ!」「ニッポンいち!」
- 国家行事や祝賀行事
- 郵便や切手:「NIPPON」と表記されることが多い
→ 力強く、格式高い印象を与えるため、「にっぽん」が使われることが多いです。
「にほん」が使われる場面:日常
- 日常会話
- ニュース・報道
- 教育現場(学校・教科書)
→ 柔らかく、自然な印象があるため、「にほん」が一般的な場面で使われやすいです。
外国人学習者に「にほん」と「にっぽん」をどう教えるか
① どちらも正解であることを明確に伝える
「どっちが間違いなの?」と聞かれることがありますが、「どちらも正しい」と明確に伝えましょう。
② 使用場面の違いを例文とともに教える
- 「日本(にほん)のアニメは人気です。」
- 「にっぽん代表、がんばれ!」
このように、文脈によって読み方が変わることを、実例で示すのが効果的です。
③ 学習者のレベルに応じて段階的に説明
初級では「にほん」を中心に教え、中上級になったら「にっぽん」との違いに触れるのも一つの方法だと思います。
今回のまとめ:日本語教師として覚えておくこと
- 「にほん」と「にっぽん」はどちらも正しい読み方
- 歴史的には「にっぽん」が古く、「にほん」が後に定着
- 「にっぽん」は促音化の影響で生まれた読み方とされる
- 現代では使い分けがされている(形式性・印象による)
- 学習者には「両方正しいが、場面によって印象が違う」ことを丁寧に伝える
いかがでしたか?
私自身、「にほん」と「にっぽん」について考えたことが一度もなかったのですが、ふと気になって調べてみたら面白い歴史があり、「促音化」との繋がりも見つけられました!
言葉を教える立場として、言葉に対していつも敏感で好奇心を持っていたいですね。
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